AIで出来ることを
既存のフレームに入れているだけでは、
何の「殻」も破る事にならない。
2026.03

AIはマーケティングの「何」を変えたのか

2026.03.01

先月アップした弊社の「沼津ヤナセ株式会社様」の事例は、私の中では「マーケティングと言う概念のアップデート」と呼べるほどの成果でした。

なぜなら、それは従来「常識」とすらされてきたリードジェネレーションを「後手に回しても、すぐに売上に寄与する成果は出せる」という事実を実証した事例になったからです。

かねてから私は「受注のできないリードは、売上起点で考えればノイズである」と考えており、それを支援でも一貫して述べて来ました。

だからこそ、日本企業の文化に即した「営業現場のファクト」を起点に、「受注」という「すべての企業が避けて通れないポイント」を起点に、そこから逆算する「受注プロセス戦略」を掲げ今日に至っていた訳です。

今日は、弊社の実例から「AIによって、マーケティングで何が起きており、どう変わるのか」について触れていきます。

▼なぜマーケティング界隈で「受注」は軽視されてきたのか

この数年、SaaSに代表されるマーケティングテック界隈では、「リードジェネレーション〜ナーチャリング」が重視されてきました。これは、多くの企業が「新規顧客の獲得を、しかも高い投資対効果で」と望んだことに起点があります。

インターネット黎明期といえば、広告の「面買い」に始まり、ADネットワーク、MAPDCAサイクルと、マーケティング手法は進化を遂げました。しかし、その根底にあったのは一貫して「投資対効果の向上」であり、その延長線上で「リードを生むこと」が評価指標として強く機能してきた時代がありました。

つまり「お金をなるべくかけずに、売上を得る」と言うトレンドです。

ところが、特に日本型経営ではリードが増えたところで「捌くはずの営業人員」が増えるわけではありません。

取り組みの初年度はさておき、数年もすれば昨年度は100件だったマーケからのトスアップが今年は200件来る。しかし精度は下がっている——そんな状況が至るところで生まれるようになりました。マーケティング界隈が「引き合いを増やすこと」を是とする以上、「これまで興味のなかった層まで無理やり広げている」側面は否定できない潮流でした。

そんな中にあっても、リードジェネレーションが評価されてきた理由は明快です。

ページビュー、資料ダウンロード数、メーリングリストの分母——「大きな数字は強く見えがち」だったからです。

対して「受注」は、リードジェネレーション界隈から見れば実に地味です。今目の前の商談の受注率をコツコツ積み上げる。そのためには商談を確認し、ストーリーを分解し、プロセスを精査する必要がある。組織間の壁もあって「成果が出にくく、手を入れにくい」分野でした。したがって「反響は減るが、実利は増える」と言う受注は、ビジネスコミットメントとしてはこれ以上ない「正解」のはずなのに、話題性の薄さもあって軽視されがちでした。

弊社は、誰もが本質を軽視する世界にあって、それでも尚「それは日本的経営の企業活動においては本質的ではないだろう」と、旗を立てていたわけです。

 

▼ AIはマーケティングの「何を」再定義してしまったのか

しかし、この状況が2025年に一変することになります。

先にも触れた通り弊社は元々「受注プロセス戦略」という商標を取り、書籍を発刊した頃からずっと「受注」にフォーカスする立場を取ってきました。マーケティングとは「価値の創造」であり、それは受注までの全行程で必要になり、最後は「受注に集約される」と整理していたためです。

意思決定要因を見極め、逆算し、リードジェネレーションに巻き戻す。

この「質」重視のアプローチは有用である一方、常に「手間(時間)」という弱点を内在していました。営業ツールの見直し、商談チラシのデザイン入れ替えは現場の承認なくては動かない。

したがって経営体力や我慢のない企業は「正解」にたどり着く前に疲弊してしまう、そんな側面も確かに存在していたのです。クオリティの高いものを練り込もうとすれば時間がかかる——それが2024年までの「常識」でした。

ところが、AIがこの「常識」を完全にブレークスルーしました。

先月の沼津ヤナセ株式会社様の事例がまさにそれです。弊社が蓄積する「逆論の勝ちパターン」をベースに、その会社のストーリーラインに当て込んだアウトプットを、AIを活用してその場で生成し、商談のロールプレイをしてみせる。

それを見た現場が「なるほど、それはアリかもしれない」と合意する。

翌日には部署に展開され、テスト的に施行される。2週間後には高級輸入車の受注が複数件まとまって成果として返ってきました。

そして、驚くべきことは、この「売上に寄与するスピード感」が、従来のMAなどのツール活用よりも「圧倒的に早い」という事実でした。

また、注目すべきは、この手法が顧客にメールの件数や頻度を増やしているわけでもなく、発信側がLPやホワイトペーパーを新たに作る必要もなかったということです。

さらに言えば、従来の手法よりも「売上に近い」。

商談資料が改善され、受注率が2倍になるとき、商談数は増えていません。変数になる因子は「確率」だからです。もし、同じことをリードジェネレーションでやろうとすれば、「数」にアクセスするため、商談数が2倍になることは避けられません。

それは、現場の負荷を増大させることになります。商談の質も下がるかもしれない。

このように、マーケティングの概念を「受注に至るすべてのプロセス」に引き伸ばしたとき、売上に最も近いのは「発注の意思決定の瞬間」です。ここに作用するアプローチが変化した——つまり、AIがもたらしたもの、それは「マーケティングのルール」そのものの「書き換え」だったのです。

 

▼マーケティングの「定義」を問い直す時代か

多くのマーケティング関係者は、AIを「時間圧縮の手法」として捉え、プロンプトなど手法論の話をします。しかし、私はその洞察では「まったく革新には及ばない」と感じます。

なぜなら、それは既存の(従来の常識とされた)マーケティングフレームという「枠組みの中でショートカットしている」という制限下にあるからです。

今回、私の目の前で起きたことは、それを遥かに飛び越えた「ビジネスのプロセスそのものを組み替える力」です。

受注を起点に改善を行い、バケツの水漏れ(失注)を限りなくゼロ化し、そのファクトをベースにリードジェネレーションやナーチャリングを再構築する。これは「フレームそのものの再定義と変革」であり、既存の枠には、もはや収まっていません。

AIは確かに市場分析、データ集計、メール文案、ホワイトペーパーを即時化します。しかし同時に「それらの作業を100回やっても受注が増えるわけではない」という事実をも提示します。

つまり、情報の量(格差)は、もはや差別化要因にはなりません。

その背景を踏まえると、マーケティングメソッドをコレクションする時代は終わり、これからは「セレクション(選定)」のフェーズに入っていると感じます。※ちなみに弊社は昨年度からこれを「セレクションマーケティング」と定義し、商標を取得しています。

これまでは「こんなに頑張ってきた」という感情的なサンクコストの概念が存在しました。しかし、冷徹に結果だけを見るならば「売上に寄与していないものはノイズ」という冒頭の結論に帰結することになることでしょう。

これは従来のリードジェネレーションをベースにマーケティングを構築してきた企業や個人には「受け入れ難い話」かもしれません。

しかし、厳然たる事実として、この潮流は今後すべての人の目の前に横たわると感じます。

少なくとも、仮に私にポジショントークの素養があったとしても、否定できる概念では無いはずです。そして、多くの人が、なんらかの「再定義」を迫られることでしょう。そして、それは時として「これまで培ってきたすべてを否定すること」も意識せねばなりません。

もはや「マーケティングの売り上げ寄与を、無理やり数字で説明する時代」は終わりました。なぜなら、シンプルに「売り上げ寄与が明白だからマーケティングをやる」時代が到来しているからです。

AIがもたらした「マーケティングの再定義」は、これから多くの企業に波及し、戦略の重要性が相対的に増していくことになるでしょう。

その時にAIを「小手先の時短ツール」として使うのではなく、いわゆる「鷹の目」のようにビジネスの全体像から俯瞰し、膨大な情報を「体系化」(たとえば受注プロセスと言う考え方のように)する活用方法が求められているように感じます。

それは、我々の「在り方」の本質回帰にも直結しているのではないでしょうか。