私ごとですが、先日、最新刊が発行の運びとなりました。
『営業を起点とし、マーケティング組織で実現させる、Webサイト受注プロセス戦略』という書籍で、自身3冊目の著書となります。まずは、ありがとうございます。
さて、本書は、営業工程をデジタル化する……というまさに「マーケティング組織の立ち上げ時」から活用されるであろう1冊です。そして、本書のメソッドは経営層向けに書きつつも、現場(営業)の方にとっても「非常に有益」な内容となることを目指しました。
ですから、読まれた方は、この話をもとにした「改革」を考え、着手される方もいらっしゃることでしょう。
ただし、それを成し遂げようとしたとき、その成否を握るのば「経営層側」にある……というのは、私の経験則上、間違いのない事実です。
なぜ、そうなってしまうのでしょうか。
今回は「改革を達成するため」に経営層に必要な「たった1つの本質」についてお伝えします。
▼書籍のメソッドの内容をかいつまんで説明すると……
今回発行される書籍では「受注プロセス」という言葉を用いて、営業工程をWebサイトをはじめとする外部の施策に転換することについて述べています。
意図的に使っている言葉が、この「受注プロセス」という言葉で、「営業プロセス」では無いんですね。あくまでも「受注」がメイン。
個人的に「商談を100件増やすよりも、受注を10件増やすべきだ」という当たり前の概念を持っているため、Webサイト上でどれくらい素晴らしいPVが出たとか、何件の資料請求が出たとか、正直、最重要視はしておらず、あくまでも受注をメインに据えています。
詳細は、書籍の中に書いているので割愛しますが、端的にこの「受注プロセス」を作ろうと思ったとき、それが「1つだけ」になるということはまずありません。
要は、商品やサービスが売れる道理というのは1つではないという事です。
たとえば、iphoneというスマホを買う理由にしても、
ある人は「防水だから」と言い、
ある人は「AppleのPCと連携が良いだから」と言い、
ある人は「音楽が楽しめるから」と言い、
ある人は「デザインが格好いいから」と言うように、
上記のような、さまざまな理由が幾重にも重なって、それが「iphoneの売り上げ」というひとつの成果をなしている……という事です。
つまり、そもそも売り上げとは「多層構造」で出来上がっています。
私のメソッド(コンサルティング)はこの「多層構造」を地層(あるいはミルフィーユ)のように、幾重にも重ねていって、最終的に「いつのまにか、大きな成果にたどり着いた」というようになるように作りこんでいきます。
たとえば、それはAという理由で毎月3件取れて、
Bという手段で毎月2件取れて、
Cのフォローアップで、さらに1件取れて……
という「仕組み」を構築することにほかなりません。
▼多くの企業が「改革」に抱く「壮大な誤解」
ところが、多くの企業は、とくに「デジタル化」などという変革を求めるとき、
「今月まで売れなかったものが、来月は10倍になる」といったような絵を描きがちです。
しかし、申し訳ないのですが、この話は個人に落とし込んでみれば、
「明日起きたら、大金持ちになっている」と言っているのと変わりません。
そもそも、売り上げを上げる手段というのは4つしかありません。
1.顧客の単価を上げる
2.新規顧客の数を増やす
3.ひとりの顧客における購買の頻度を上げる
4.解約を減らす
この4手です。そして、改革の多くは「2」にのみ集約して考え、
「どこかに、我々の知らないブルーオーシャンが存在し、そこにアプローチすれば、大当たりする」と、まるで一攫千金のようなことを考えるケースが本当に多いのです。
しかし、心から改めて考えてほしいのですが、そんなものが「本当に存在すると思って」いますでしょうか。
あるいは、仮に万が一それが存在した場合、やっとの思いで苦労の果てに見つけたそれを「おいそれと他人に教える愚か者」は、本当にいるとお考えなのでしょうか。そういう考えであればこそ、「これさえやれば大丈夫」のような言葉に騙され、また失敗してしまう……そんな不幸な連鎖を何度も見てきました。
断言します。そんなものを探すのはおやめになられたほうが賢明です。
それは、あなたに対して、
「手っ取り早く、苦労せずに出世したいのですが、何かコツはありますか?」と聞いてくる部下と一緒なのですから。
▼じっくりと、確実に、手厚く増えていく楽しみを知ってほしい
「受注プロセス戦略」では先の例にあったように、ひとつひとつの施策を考えれば、それが「単一で大きな成果を生み出す」……というケースは一般的ではありません(大爆発するケースも、もちろんありますが過剰な期待はしないほうがいいでしょう)。
ですが、そういった「3件」とか「2件」とか言った数字が、幾重にも重なっていくこと、そして、それが「突発的な成果」ではなく「仕組み」として稼働するとき、まるで複利の定期預金のように「じわり、じわり」と貴社の獲得件数は、まさに「積みあがって」行きます。
そして、1年後などに「いつの間にか予算を達成していた」というようなことが、本当に起こるのです。
私が、自分のメソッドを現場に披露すると、まず「現場が歓喜」します。
「やっと、自分たちが成すべきことが分かった」と。
あるいは、「この1件は、初めて自分で狙って生み出せた」となるからです。
つまり、ヒットを(バットを振ったら偶然)「打てた」んじゃないんですね。
自らの力で、ヒットを(狙って)「打った」からです。
それがどんなに感動し、興奮することか……。私はよく知っています。だから、「もっとやりたい!」と現場が言う。でも、この時点では残念なことに「まだヒット1本」なんですね。
これをいくつも重ねて、「得点を取る」ところまで持っていかないといけない。
ここまで1か月で到達する企業もあれば、3か月かかる企業もあります。半年たってどうにか……という企業も、ございます。
いずれにせよ、経営者の方々に私が言いたいことは、 「この、やっと芽吹いた成長の芽は、どうか、長い目で見守って(摘まないで)ほしい」という事なのです。
私も会社員をしていた時期もありますし、今は経営者の端くれですから短期的な「売上目標」を求めなければならないことは重々わかっています。しかし、それでもようやく現場が暗いトンネルを抜け、光明を見出した今、それを「すぐに成果が出ないから」と止めてしまう事は、今までの時間を無駄にするのみならず、それにかかわってきた人材の「心を折る」(会社に絶望する)にも十分なのです。
当たり前ですが、私も成果が見えにくい状態のものを一時が万事「続けないとだめだ」とは言いません。だけど、そうする前に、自ら、現場の人間の目を見て、よく話を聞いて、耳を傾けてほしいのです。彼らは私欲でそう言っているのではありません。彼らには「未来」が見えているから、そう言っているのです。
私が経営者に求めるのはこれだけです。
企業には、その企業の実力やフェーズにあった「伸びしろ」が存在します。短期間で大きな成果を上げる企業はもちろん存在しますが、それは裏を返せば「それを成しえるだけの素地が、いい意味でも、悪い意味でも存在していた」という事にすぎません。
だからこそ、「今何が起きているのか」の先にある「これから、何が起きようとしているのか」について、先見の明を持っていただければ幸いです。なぜなら、あなたがいま「成そう」としている事は、未来に続く「組織の改革」なのですから。
さて、貴社には、未来のために、今すべき「覚悟」がございますか?