実態なきイメージ先行は、壮大な「虚像」を作り上げる。
「身の丈」こそが、最初に理解すべきことである。
2022.09

「型」が定まらないままイメージを先行させた施策の末路

2022.09.01

昨今、徐々にではありますが「コロナが明けて…」という流れからなのか、企業が集客施策に力を入れなおす局面が増えてきました。私のところに頂く相談も、これまでは「自社のデジタル推進に伴う戦略構築…という大枠のものが多かったのが、今年の春先ごろからは、

「直近の展示会で大々的に目立って成功したい」や、
「デジタル広告を派手に投下して劇的な成果を上げたい」など、

具体的なイメージ先行の施策に話が移っていくお客様が増えたように感じます。

一方、これらの施策を支援させていただくと、初期フェーズにおいては、かなり多くのお客様が、その「順番」を「あべこべ」に考えていらっしゃって、時には、弊社の指導に納得された先に「今回は、間に合わないなりにやるしかない」となっている事業者様が多くなっているのも事実です。

彼らは取り組もうとしている施策に対し相応の時間があったはずです。
かつ、具体的な内容を詰める心構えもあったはずなのです。

しかし、なぜ「そのようなことが起きる」のでしょうか。
彼らは、「何の順番」を間違っていたのでしょうか。

今回の提言は、企業の陥りがちな「イメージ集客の罠」と、その改善策のお話しです。

▼“イメージだけを先行させた集客”が行きつく先とは

この解説をするために、私の若いころの経験を話すとご理解頂きやすいかもしれません。

私は日本人の平凡な容姿を持ちながら、「デ・スーザリッキー」という名前を持って生まれました。当時の日本では、こういう存在は非常に珍しいものでした。

そんな私が、たとえば、入学、転校、アルバイトの就職、部活の加入、合コンやサークルなどの集まりへの参加など、日本国内において何か活動をし、さらに特に写真もなく名前だけが先行して露出した場合、多くの方は「会う前」に、こんなイメージを持たれることが(それは今でもなのですが)一般的です。

「きっと、青い目で、背が高くて、金髪のイケメンに違いない」
合コンだと最悪ですね。まあ、言うまでもなく「出オチ」です(笑)

「な~んだ、ディカプリオみたいなイケメンだと思ったのに期待して損した」 それで、次に(ほぼ100%)聞かれるんです。

「それで、(せめて)英語は喋れるの?」と。
で、当時の私は、日本生まれの日本育ちですから「喋れなかった」んです(※今はVersant58点ありますが)。

だから、ここでまた「なんだよ、お前マジでつまんねーな」とかなるんですよ。

……さて、皆様お気づきでしょうか。

実は、私、初対面で「まだ何もしていない」のに、人様に2回も「がっかり」されています。試合開始早々、私の「印象スコア」は0-2です。

凄くないですか? 何もしてないのに勝手に期待されて、勝手に興味を失われました(笑)

合コンとかだとそのままお流れになったり、酷い時には「せっかく大事な予定を調整してきたのに、ふざけんな!!」とマジ切れ(泣き)され、存在を全否定されたこともあります。

もうね、ここまでくると意味が分からないです(笑)

まあ、こういう人生にはもう慣れっこですし、今はそこからでもどうにでも出来ますが。

ただ、この私の体験談は非常によくできていましてね。
何が言いたかったというと…簡単にまとめますと。

「中身が伴わない状況で注目だけを集めても、結局、最後はガッカリされて(というか、期待を裏切った分、ひどい印象を与えて)終わり」という事なんですよ。

▼“イメージだけを先行させた集客”が抱える2つの「致命的な弱点」

これは法人のみならず、個人の露出でもよく見られるのですが、たとえば、多くの人や企業は、大きな媒体や影響力のある方に取り上げられ、注目されることを望みます。世の中には「そこに取り入る手段」をノウハウ化している方すら存在します。

おそらく、その戦略は「その瞬間だけ」を考えるのなら効果的でしょう。

なぜなら、それがうまくいけば、一時的に、貴社(あるいは貴方)は注目を浴び、圧倒的な成果が出るからです。効果が伸びて「やった!」と思う訳です。ある種のSNSのバズなんかは完全にそう思います。

しかし、そこに、自身の中身が伴うならいざ知らず、もしそれが身の丈以上の“型なき集客”だった場合、あなたはその後、延々と2つの「致命的な弱点」と向かい合うことが求められます。

そのひとつ目は「再現性」の問題です。

一時的に爆発をさせるタイプの施策は、伸るか反るかと言ったような、ある種の博打的な側面を持っており、通常「1回目」こそが最も大きな影響力を発揮します。

当たり前ですが、同じネタで継続して成果を上げ続けることは困難ですし、それを続けるためには手を変え、品を変え「何がハマるのか」を模索し続けなければなりません。

言うなれば「一攫千金」の金脈探しのようなもので、とにかく(企業の施策であれば)社内でも認められるために、より多くの人に注目を浴びようとします。

さらに、タチの悪いことに、周囲(上司や、時にはフォロワーなど)からは「次はもっとだ!」とより高いハードルをも課されてしまうのです。

さて、そうなると多くの場合、担当者はその要望に応えるために、より「強烈な行動」へとエスカレートしていかざるを得ないのです。無理をし、さらに実力以上のことをし、始終、その動向にだけ日常の意識すら捕らわれていく人もいます。

……結果、そういって形成される「イメージ」は、どんどん「本来の目的」から、かけ離れて行ったものになってしまうことすらあります。

2つ目の問題は、この1つ目に紐づく(というか延長線上にある)のですが「相手のイメージと、(自らが理解している)実像のギャップ」の問題です。これが、まず解消できない。

そもそも、拡散がされる……というのは、ストレートに「より、自分のことを全く分かっていない人間まで広く届く」という事実に直結します。それは即ち「良く知らない相手から、勝手なイメージを自分勝手に形成される」ということを意味します。

そう、まさに、冒頭の私のように……です。

しかし、残念ながらそこに存在する「実像」については、別にバズって人格が上がるわけでもなし「ありのまま」でしかありません。そして、当たり前ですがイメージしている側の人には悪気はありません。

なぜなら、そのキッカケを作ったのは、外ならぬ発信者自身なのですから。

だからこそ、どうにかしようとするのですが、仮にそこで一時的な「その場しのぎ」が出来たとしても、結局、最後の最後まで貫き通すことはできません。

理由は簡単です。

「自分には、その期待に応えるだけの実力が、そもそも無い」
残念ながら、これが真実だからです。

内輪ならまだ収まるからいいんです。でも、一般(大衆)まで拡散した状態だと、もうどうにもなりません。

たとえば、過去の私を例にあげれば「英語? しゃべれるよ?」とかフカしてみたところで、「じゃあ、喋ってみてよ」とか言われるくらいならまだしも、下手をすれば、何かの拍子に「あ、そうなんだ。ちょうど来月、外国人交流で生徒が来るからスピーチしてよ!」とか言われた日には……悪夢としか言いようがありません。

もしそうなれば、欠席するでしょうね。そして間違いなく「きっと、あいつ本当は喋れないんだぜ。最低の嘘つきだ」とか、陰口を叩かれ、信頼も地に落ちる事でしょう。

完全に自業自得です。まさに「虚像の末路」と言っていいでしょう。

このような話は個人に限らず、法人格にしても同じことが言えます。自社の魅力、サービスを正しく「価値」として認識し、身の丈をわかっていない訴求をすれば、冗談ではなく「誰も幸せにならない関係」に、いずれ陥るのです。

たとえば、「貴社のサービスなら何でもできるんですよね!」と過剰な期待をさせたことで、一時的に多くの契約をとれたとしたとします。

しかし、それらがゆくゆく「最悪の満足度」「止まらない解約」「山積するクレーム」という問題を噴出させるのには、さほど多くの時間はかからない事でしょう。

そして、もっと手前のプロセスでも「それは起きる」のです。
実際、我々の身の回りにも「それ」はあふれています。

みなさまも、ご経験はありませんでしょうか?

記事の「釣りタイトル」=記事の見出しは良いが中身はペラッペラ
誘導しか考えていない「広告バナー」=クリックするとガッカリして直帰
中身のない「コミュニティ」=その場限りの承認欲求(武勇伝や、称え合い)に終始
誇大告知した「製品」=景表法や薬事法など法令違反の可能性すらありえる

我々が「疑問を感じた」それらすべては「実に、本質」です。
みなさまの思われる通り、それらは中長期的に企業に「不利益」をもたらします。

なぜなら、皆様はそれらに触れた折に「怒り」や「落胆」を感じたわけですから。

▼成功のカギは「型」と「期待値コントロール」

だからこそ、露出の前には「型こそが重要」です。

自社の「身の丈に合った価値」を正しく理解・設計し、正しく訴求する。

そのうえで、露出が広がるのならば、多少相手が大きくこちらをとらえても、その後に伝えていく情報で「正しい期待値」にコントロールすることが出来るようになります。

そして、その状態は「相手の期待値」に「こちらの提案」が釣り合う状態となり、お互いが「そう、こういうのが欲しかったんだ!」と満足するかたち=マーケティングの理想形が完成するのです。

そもそも、本来、我々は展示会でたくさんの集客をしたいわけではありません。
ましてや、そこで盛り上がりたいだけでもありません。

Webサイトの集客だけを爆発させたいわけではありません。
とりあえず引き合いを量産したいわけでもありません。

なぜなら、我々が欲しいのは、その先。「受注」だからです。

正しい情報=期待値のコントロールだから、正しい訴求になり、あるべき受注を生み出す。

それが、たとえば弊社の提供する「受注プロセス戦略」の全容であり、そもそも論、すべての企業の「あるべき姿」はそうなっているはずです。

したがい、本コラムの冒頭にあった、
「直近の展示会で大々的に目立って成功したい」や、
「デジタル広告を派手に投下して劇的な成果を上げたい」などは、

あくまでも「受注に至るプロセスの過程」であり、「結果」ではありません。
そして、たかが過程に「魔法」も「これさえやれば大丈夫」も存在しえません。

さらに「それが手段でしかない」のなら、なおのことです。

結論、正しい「自己認識」さえ持てれば、Webサイトにせよ、展示会戦略にせよ、その「景色」も「やるべきこと」もガラッと大きく変わることになります。

この「イメージ」と「型」の関係こそが、多くの皆様が「間違えていた順番の正体」です。
だから、そのタイミングからでは準備が間に合わなくなるのです。

結局、それが個人であれ、法人であれ。
我々は、手持ちのカードでしか勝負できません。
引用:「You play with the cards you’re dealt」※スヌーピーの名言より抜粋

この事実が抗えないからこそ、我々は、まず「身の丈に向かい合う」べきなのです。
※実力以上のものを露出しても「不幸」にしかならないからです。不服なら実力を付ければいいだけの話です。

それは、 「我々は、何が、本質で、
我々は、なぜ、顧客に選ばれていて、
我々は、誰に、何を、訴求すべきなのか?」

既に存在するはずの、その答えを「言語化」する事からはじまります。

さて、貴社には、訴求から生まれる“期待に応えられる型”が出来ていますか?